空色(全242話)

明日とか明後日とか。
自分のいる時間より先を考える事が、すごく恐かった。

明日が来なければいいと、本気でそう思った。


『あ、今日は十和さんの家行っても駄目っすよ』

……と、突然。
私をアパートに下ろすと同時、幸成が言った。

ってか、何でそんな事言われなきゃいけないの?
私がどうしようと、幸成には……

『この後、俺と会う約束してんすよ。 だから留守なんです』

ああ。
なるほどね。

一応、親切のつもりなのね。

『何? 十和とカラオケ? ディナー? ボーリング?』

なーんて、どれも似合ってないけどね。

『全部ハズレ。 俺に頼んでおいたDVDを取りに来るついでに、俺ん家で飲んでいくんです』

『ふ、ふーん』

最近になって、幸成も十和も、お互いを隠さず話すようになった。

この間までは、連絡を取り合ってる事すら隠してたくせに。

ってか、なんだよ。
超仲良しじゃん……

『DVDねぇ……』

そんな他愛のない事まで話す仲だったなんて意外だわ。

『つっても、AVとかじゃないっすよ?』

『う、疑ってないし。 ってか、十和にAVって想像つかないってば』

『聖職者でもあるまいし。 23にもなる男が、興味ない事はないと思いますよ?』

あーもー!!
あえて言わなくていいって、それ!

『どっちでもいいから、早く行ってよ!』

話してたって、ラチあかないもの。

『そっすね。 じゃあ、また明日』

ニコッと笑顔を見せ、運転席に戻る幸成。
一応、私も笑顔を見せておいたつもりだけど……

少し、溜め息が混じった。
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