空色(全242話)

オーナーに逆らった罪の意識と恐怖心からか、中々寝付けなくて……

全く寝た記憶のないまま、朝を迎えてしまった。

いつも夕方に起きる癖にしてたから、朝日なんて久しぶりに見る。

確か東から上るんだっけ?
ってことは、あっちが東か。

ビル、アスファルト、マンション。
何処を見ても石で出来たものばかり。

海とか山とか水田とか、
そんなもの、どこにも見当たらない。

また見に行きたいな。
十和と一緒に見た電車の窓からの景色……


十和……会いたいよ……








『寝不足っすか?』

夕方になって迎えに来た幸成は、「おはよう」より先にそう言った。

『オーナーが気になって眠れませんでした?』

『まぁ、ね』

『大丈夫ですよ。 アユ達が何か言われても、絶対に庇(カバ)いますから』

幸成は強い。
私によく似た、冷めた目をしてるのに、私なんかよりずっと強い。

『ありがとう。 でも、そんな事したら幸成が危ないよ』

『平気ですよ。 言ったでしょう? アユを連れて逃げ切る自信があるって』

自信満々な笑顔だ。
あんたなら、本当に逃げ切ってしまいそうだね。


私も、何度かオーナーに逆らおうと思ったよ。
逃げようとも思った。

でも、出来なかった。

早苗のようになるのが、怖かったから……


そんな私が逃げても、すぐに捕まってしまうだろうし。
今は、十和の傍にいたいんだ。

だから、あんたが逃げる時は、せめて美香だけでも、連れてってくれないかなぁ……?

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