空色(全242話)

昨日の事もあって、ある程度は覚悟してきた。

何とか言い訳も考えてきた。
それが上手く話せるかは、ちょっと自信ないけど……

でも、そんな心配は無用だった。

『貴様。 昨日は一体、どこにいた』

言い訳など、聞いてくれる人もいなかったから……

『誰1人、お前の姿を見とらんのだ』

幸いオーナーは出勤してなく、藤原がカウンターで待っていた。

「何故、来なかったか」
そう言われた時の言い訳は考えたけど。
「どこにいたのか」は考えてこなかった。

しまった。
私のミスだ……

もう頭を下げるしかないと、そっと目を閉じた時。
「ダンッ」と何かを打ち付けるような音がして、私はまた目を開けた。

『てめぇの事だよ。 立川幸成!』

視界に映ったのは、肩を壁に押し付けられ、眉間にシワを寄せた幸成だった。

どういう事?
どうして幸成が?

『お前は昨日、どこで何をしていたんだ?』

藤原は眉を吊り上げ、幸成に顔を近付ける。

あまりの身長の差に、藤原が下から睨み付けるような形になってしまい、漫画の中のチンピラみたいだった。

『監視室です。 監視が私の仕事ですので』

淡々と答える幸成に、藤原の怒りは加速する。
顔を真っ赤にして、今にも殴り掛かりそうだ。

『客は誰もいなかったんだ! 何を監視する必要がある!? 貴様まさか……』

「まさか」
そこまで言いかけ、藤原は言葉を飲む。

『まぁ、いい。 これからは馬鹿な事するなよ』

そして、さっきまでの怒りようが嘘のように、あっさりと引き下がった。


『あー、驚いたー』

と、幸成。
驚いたのは、私だっての……
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