空色(全242話)
つけっぱなしのヒーターのおかげで、床に座っても暖かく過ごせた。
目の前に広がる殺風景なリビングを眺め、自然と心が和む。
ここで目覚め、
ここで食事をとり、
ここで眠る。
十和の全てがここにある。
そう思うと、何もない部屋が愛しく思った。
リビングのガラステーブルに雑に置かれたDVDや雑誌。
どんな映画を見て、どんな本を読むのか。
何と無く気になって、整頓するついでに手にとってみた。
あ、漫画だ。
TVガイドも。
新聞は、とらない派なんだぁ。
DVDは、レンタルしてきたやつもある。
これ、私も見た事ない映画だ。
十和が帰って来たら、一緒に見たいなぁ。
あ、こっちは……
『Baby……Doll……?』
自分で焼いたDVDみたいだけど、
「BabyDoll」なんて書かれたDVDが2つ。
中身は……?
『アユ? 来てたの?』
と突然、背後から聞こえる声に、ビクンと肩が跳ねる。
『あ、十和……』
『煙草切らしちゃってて、コンビニに。 ごめんね、散らかってて』
十和はそう言って笑うと、テーブルの物をまとめて棚の引き出しにしまった。
同時に、あのDVDも……
『ごめん。 勝手に上がって』
『何で謝んの? 合い鍵あげたじゃん』
そうだけど……
『別にやましい事もないし、大丈夫だよ?』
そうなんだけど……ッ
しまわれたDVDが気になって。
『あ、あのさ。 幸成から借りたDVD、どうだった?』
意気地無し。
本当は、あれが幸成から借りたDVDかどうか、確かめたかったのに。
『普通に、面白かったよ』
確かめられない……