空色(全242話)
BabyDollまでの道のりが、こんなに長いなんて、思ってもみなかった。
途中、いろんな事を考えて、涙も零れそうになった。
その度に美香が私の手を握るから、「しっかりしなきゃ」と前を向けた。
いつもの出勤時間より、少し早めに着いた私達を待っていたもの。
それは、傷だらけで床に片膝をつけた幸成の姿だった。
しかも……
待合いから待機室へと続く通路で……
そんな場所でされたから、女の子達は移動も出来ず、ただ無言のギャラリーとして、それを見ていた。
『おい、藤原』
藤原を呼んだオーナーは、顎でクイッと幸成を指す。
『場所を変えるぞ。 こいつに手ぇ貸してやれ』
スッと差し出される藤原の手。
幸成はその手をパシッと叩き、オーナーを睨みつけて立ち上がる。
「自分で歩いて行く」
そんな意志表示だろう。
幸成は、決して奴らに負けてない。
それより、どうにかして逃がしてやれないだろうか。
オーナー達は、どこに移動するのだろう。
『監視室だよ。 前に幸成くんが、唯一鍵のかけれる部屋って言ってた』
美香はそう言うが早いか、監視室の方へと走っていく。
『待ってよ!』
私も行くよ!
こうなった事を、幸成だけのせいには、したくないもの。
あの日、私達を庇ったからこうなった。
いわば、幸成は私達の身代わりなんだから……