空色(全242話)
私達が監視室の前に着いた時に調度、監視室に鍵がかけられた。
……遅かったか……
冷たい鉄の扉に手をつき、乱れた呼吸を整える。
と、同時。
『何のつもりかって聞いてんだよ!!』
オーナーらしき男の怒鳴り声が聞こえた。
反論する隙もないほど、続く罵声。
こんなの「質問」なんかじゃなく、ただの暴力だ。
《プルルルル プルルルル》
え……ッ!?
頭の先から爪先。
血の気が引くのがハッキリとわかった。
どうして、携帯の電源を切らなかったんだろう。
いつもなら、店に入る直前に切るのに。
……そうか。
今日は、幸成の事で焦ってたから……
『ッ馬鹿! ぼーっとしてないで逃げるよ!』
突然の美香の言葉に我に返り、ポケットの携帯のボタンを押し、着信音を止める。
無我夢中で部屋を飛び出し、廊下を走った。
『誰だ!? どこに行った!!』
藤原の大声が遠くで聞こえ、私達は個室へと逃げ込んだ。
《アユ? どうした?》
と同時、ポケットから聞き慣れた声が聞こえた。
『……十和』
適当なボタンを押したからだ。
『どこだ!! 出てこい!!』
ああ、また藤原の声……
《隠れてろ。 すぐ行く》
……え?
十和の言葉に驚き、携帯を耳に当てる。
しかしもう電話は切れていて、「ツー ツー」と機械的な音だけが、いつまでも鳴っていた。
『十和さん、何だって?』
……すぐ行く?
十和がここに来る?
『美香……どうしよう……』
今来たら駄目だよ……