空色(全242話)
私達を探すため騒がしかった店内が、急にシンとなる。
諦めたのだろうか。
それとも、そう思わせて私達の方から姿を現すのを待っているのか。
考えれば考える程、恐くて動けなくなってしまった。
と、突然。
キィと音をたてて、部屋に光が差し込んだ。
『ここにいる?』
……この声は、十和だ。
『よかった。 無事で』
安堵の笑みを浮かべる十和に、堪えていた涙が溢れた。
助けに来てくれた喜びと、十和を巻き込んでしまったという罪悪感。
何も言葉が出ず、勢いに任せ十和の腕の中に飛び込んだ。
『恐かったね…… もう大丈夫だから』
子供のように髪を撫でられ、しゃっくりをあげる。
自分でも可笑しかった。
『そうだ、十和。 幸成が大変なの』
ようやく落ち着きを取り戻し、十和に事情を説明する。
ただアドバイスが欲しかったんだ。
それなのに、
『俺が行くよ』
まさか、そんな風に言ってくれるなんて……
『駄目だよ! 見つかったら、十和まで酷い目に』
『大丈夫だよ』
大丈夫なわけない。
オーナー達は、お客さんにだって容赦しないもの。
『俺は絶対に大丈夫だから、アユはここにいて』
ふと見えた寂しげな笑顔に、返す言葉を見失う。
止めなきゃいけないのに。
叩いてでも止めなきゃならないのに。
止めれなかった……