空色(全242話)

私達を探すため騒がしかった店内が、急にシンとなる。

諦めたのだろうか。
それとも、そう思わせて私達の方から姿を現すのを待っているのか。

考えれば考える程、恐くて動けなくなってしまった。

と、突然。
キィと音をたてて、部屋に光が差し込んだ。

『ここにいる?』

……この声は、十和だ。

『よかった。 無事で』

安堵の笑みを浮かべる十和に、堪えていた涙が溢れた。

助けに来てくれた喜びと、十和を巻き込んでしまったという罪悪感。

何も言葉が出ず、勢いに任せ十和の腕の中に飛び込んだ。

『恐かったね…… もう大丈夫だから』

子供のように髪を撫でられ、しゃっくりをあげる。
自分でも可笑しかった。




『そうだ、十和。 幸成が大変なの』

ようやく落ち着きを取り戻し、十和に事情を説明する。
ただアドバイスが欲しかったんだ。

それなのに、

『俺が行くよ』

まさか、そんな風に言ってくれるなんて……

『駄目だよ! 見つかったら、十和まで酷い目に』

『大丈夫だよ』

大丈夫なわけない。
オーナー達は、お客さんにだって容赦しないもの。

『俺は絶対に大丈夫だから、アユはここにいて』

ふと見えた寂しげな笑顔に、返す言葉を見失う。

止めなきゃいけないのに。
叩いてでも止めなきゃならないのに。

止めれなかった……
< 218 / 243 >

この作品をシェア

pagetop