空色(全242話)
『同じ階段は上らない、か。 言うじゃねーか、十和』
クックッと不気味な笑みを浮かべるオーナー。
それを睨み付ける十和。
今までに感じた事のないプレッシャー……
嫌な汗が背中を通る。
『なぁ、十和。 両親を亡くしたお前をここまで育てたのは、誰だった?』
……育てた?
『飼い犬に手を噛まれるとは、まさにこの事だな。 そもそも、お前の父親は、あの男じゃないだろう?』
解らない。
解らないよ。
こいつは、何を言おうとしてるの?
『お前の父親は俺だ。 あの2人からお前の血液型は出ない。 自分でも、調べたんだろう?』
…………え?
オーナーが……父親?
オーナーの息子……十和?
嘘、嘘、嘘!!
『嘘だよね!? 十和!』
だって、似てないじゃない。
顔も背も体型も、声さえも。
性格だって全然……ッ
『嘘じゃないっすよ。 俺も調べて、十和さんに確認しました』
いつもより低いトーンの声で、幸成が言う。
【あの人の秘密は、アユが思うより、ずっと大きなものっすよ】
そうか。
幸成が言ってたのは、この事だったんだ。
ハハ……
それ早く教えてよ……
『アユ、帰るよ』
と、突然。
十和が私の腕を強く引く。
『俺から逃げられると思うのか? 血が繋がってるのと同じように、俺とお前も繋がってるんだよ』
高笑い……
吐き気がするよ……