空色(全242話)
『俺がもうすぐ23になるから、24年くらい前の話かな』
十和が「自分の事」と話し出した事。
それは、
『今のBabyDollのオーナーが、まだ違う人だった頃。 あの人は、黒服として働いてたんだ』
まるで、
『そこに、うちの母親と、その恋人の黒服がいて』
だいぶ前に幸成に聞いた話、そのものだった。
【その女を無理矢理、自分のものに】
幸成がそう言った女(ヒト)が、十和のお母さん。
そして、
【それが運悪く妊娠しちゃって】
それが、十和なのね?
だとしたら、幸成の言ったオーナーの過去は、全て現実。
十和が黒服の男を父親としてきた事も。
2人が十和の前からいなくなった事も。
オーナーが、十和を引き取った事も……
『自分でも、ずっと傍にいた父親以外に父親がいるなんて信じられなくて、何件も病院を変えて血液を調べたよ』
でも本人から聞く話は、噂を聞くのとは違う。
『でも結果は同じだった。 AB型の父から、O型の俺は生まれない』
妙にリアル。
リアルすぎて、恐い……
『俺、あの優しかった父が俺を残して消えるなんて信じられないんだ』
そして、十和の思った事は、私の想像した事と同じ。
『どこかで、死んでるんじゃないかって、思ってる』
【オーナーが殺したんじゃ】
幸成も、きっとそう思ったから私に話したんだろう。
皆、どこかでオーナーを疑ってる。
『だから俺も、ずっとあの人の顔色をうかがって、本当の息子として生活してきたんだ』
疑いながら、感じてるんだ。
「次は自分かも」という恐怖を……