空色(全242話)

十和の話、
全部わかったつもりでいる。

だけど、このすっきりしない気持ちは?

『ごめんね? 何回か話そうと思ったんだけど』

もしかしたら、十和の表情が少しも変わらないからかも。
いつだって、十和は私の目を見て話をした。

真っ直ぐで、素直で……
偽りのない十和の目が好きだった。

だから、そんな十和がいなくなったような……

絶望感?
失望感?

『あの最初の日、十和はどうして、お店に来たの?』

【アユが一番綺麗だったから】

あれに、嘘はない?

『いなくなった父の、手がかりを探しに』

『手がかり?』

『あの人の周りで、俺が探ってない場所は、もうあの店しかなかったから』

淡々と出る言葉に、ショックを受けないとは、とても言えない。

『店の内部まで知るために、誰かに頼らなきゃって思った』

だって私、こんな十和知らない。

『だからアユに初めて会った日、どうにかこの娘(コ)を使えないかと思った』

こんな事実、聞きたくなかった。

『大勢いた女の中で、アユならセックス無しでいけると思った』

……そうだね。
皆、十和に抱かれようと媚(コ)びてた。

どうせ同じ値段なら、客は若い方がいい。
格好いい方がいい。

十和も同じね。
抱きたくもない女を抱くのは嫌だもの。
言葉だけで使えるなら、それに越した事はない。

『でもアユ、俺は』

止めて。
もう止めてよ。

これ以上、私の中の十和を奪わないで。

青空を見ようと言った十和を。
キスの後、照れたような顔を見せる十和を。

私を抱きたいと言った十和を……

消さないで……

『少し、一人にして』

まだ夢を見させてよ……
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