空色(全242話)

ただ何となく十和のペースに巻き込まれていた私。
こんなにハッキリと拒絶したのは、初めてかも知れない。

それに対して、十和は何も言わなかったし、
表情も変えなかった。

『家まで送るよ』

ただ……それだけ。








騒がしい歓楽街を抜け、静かな住宅地に入る。

シンとした車内は、何だかいつもより寒い気がした。

自然と涙が出た。
でも気付かれたくなくて、ずっと景色を見ていた私に十和は、変わらず口を閉ざしたままだった。


車を降りる時には涙はすっかり乾いて、ようやく十和の目を見る事が出来た。

『最初に言ってたら、何か変わったかな』

十和は、いつもの優しい笑みを浮かべていた。

『アユは、俺を好きになってくれた?』

胸が苦しい……

十和は?
十和も、こんな私を見て、何か感じてる?

『好きに、なってたと思う』

自信があるわけじゃない。
でも、自然と答えてた。

『ありがとう』

でもそれ以上の答えはない。

『じゃあ…… ばいばい』

短いやり取りが終わると同時、生暖かいものが頬を伝う。

自分でも驚くほどの、大量の涙……

【少し一人にして】
私は十和を拒絶した。

【ばいばい】
これは、十和からの返事。

十和は、私を手放した。
私は、十和を手放した。

二人で誓った永遠が終わりをみせる。
いとも……簡単に……
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