空色(全242話)
『とにかく俺は、店に戻ります』
真っ直ぐ私の目を見て言う幸成に、私は上手く言葉が出なかった。
狙われてるのは、幸成と私だと思ってた。
美香は無関係だって。
でも、十和がオーナーといた時、美香はずっと傍にいた。
守らなきゃいけないのに、一人にしてしまった。
美香も、私の所に泊まらせるべきだった。
『私も行く』
私が、美香をこんな目に遭(ア)わせてしまったんだ……
私達は、停めておいたタクシーに乗り込み、来た道を戻った。
『十和さんにも言った方がいいっすよね』
歓楽街に入る頃、幸成が呟いた。
どうしよう。
正直、気まずさはある。
でも、もしオーナーを止められるとしたら、それは十和だ。
もはや、無関係とは言えない。
でも……
『十和さんと何かあったんすか?』
何かあったわけじゃない。
喧嘩もないし、気持ちが変わったわけでもない。
『オーナーと親子だったってのが、どうしても引っ掛かりますか?』
なんだよ。
わかってんじゃん。
『恋人は選べるけど、親は選べないっすからね』
そうだよ。
そんな事、わかってるんだよ。
『アユは、あの人だから好きになって、あの人もアユを好きになった。 それじゃ駄目なんすか?』
わからない。
自分が何にショックを受け、何を納得できないでいるか……
『ま、俺にとっては好都合なんで、このまま向かいますか』
なんて、不敵な笑み。
状況をわかってるのかしら。
これから、敵の親玉の所にいくのよ?
でも、それに反対しない私も、
無謀かも知れない……