空色(全242話)

閉店後の店内は、やけに静かで不気味だった。

いつもなら鍵なんて開いてないのに、今日は開いてる。

中に誰かいる……

『アユは待ってて。 俺が行きますから』

中に入ろうとする私を大きな手が、外へと押し戻す。
それとほぼ同時だった。

ガツンッ……と鈍い不気味な音をたて、今目の前で元気だったはずの人物が、床に倒れ込んだ。

つー……と、ガラスをなぞる赤い血。

『幸成!?』

何が起こったかわからなくて、戸惑いながら扉を押すが、倒れた幸成が邪魔で開かない。

駄目だ。
私の力じゃ、幸成ごと押し開けるなんて事……

『……あ……あッ』

突如、暗闇から現れた人物に、喉が震える。

……オーナー……

恐怖で逃げる事も忘れ、立ち尽くした私に、冷たいガラス扉がゆっくりと開く。

『十和はいないのか?』

低く、けげんそうな声が静かな夜によく響く。

『十和はどうしたと聞いてるんだ』

恐い。
恐くて、声が出ない。

『あの女を餌にしたくらいじゃ、不十分だったようだな』

……美香の事だ。
やっぱり美香はここにいる。

でも、幸成も私も、もう美香を助けられない。

……罰だ。
十和を信じなかった私に対しての罰。

【十和さんにも言った方が】

ごめんね、幸成。
私が、全て悪かったの。

十和を、頼るべきだったの……
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