空色(全242話)
脳に直接受ける鈍痛。
一瞬見えた血溜まり。
残る後悔……
十和に言えば良かった。
「それでも愛してる」と……
『……ん……』
消えたはずの光が、ゆっくりと視界に広がる。
ここは……
『監視室だよね、ここ』
と、隣から聞こえる声に驚いて体を起こす。
『大丈夫? 血が出てる……』
美香だ。
美香がいる。
『美香、無事だったんだね』
ズキンズキンと痛む頭を押さえ、美香に歩み寄る。
『私は大丈夫。 それよりアユが』
泣き腫らしたのか、美香の目は赤く、私を心配そうに見た。
良かった。
もう、美香に会えないかと思った。
でも、ここから出られないんじゃ、美香を助けた事にはならないか……
冷静になって辺りを見回すと、ここは監視室。
モニターは動いてないみたい。
幸成が気になったけど、モニターがなきゃ確認も出来ないし。
と、モニターの上の物に気付き、手を伸ばす。
そこには、私の携帯が置いてあった。
まさか、
これで十和を呼べって事?
美香が駄目なら、私を餌にするのね?
……ごめん、美香。
私、十和をここに呼びたくない。
オーナーはきっと、裏切り者の十和を許さないもの。
『美香。 私が外に出してあげるからね?』
だから、もう少しだけ我慢してね?
携帯を開き、カチカチとボタンに指を走らす。
十和のメモリを見つけ、大きく息を吐いた。
1、2、3、4コール目に聞き慣れた愛しい声が、冷たい機械の中に響いた。