空色(全242話)

『話は終わったか?』

美香との話が終わると同時、オーナーが監視室へとやってきた。

『十和は来るか?』

馬鹿だね。
十和は来ないよ。

『十和は来ない。 呼んでない』

こんなに真っ直ぐにオーナーを見たのは初めて。

見れば見る程、十和と似ていない。

『貴様……ッ 調子に乗るな!!』

大声と同時、私の体は宙に浮き、床へとたたき付けられた。

それでも、十和は呼ばない。
絶対に……ッ

『誰がお前を拾ってやったと思ってるんだ! こっちは大金払ってんだ!!』

怒りに任せ、振るわれる拳(コブシ)。
何度も何度も、私を打(ブ)った。

『アユ! アユ!!』

遠くの方から、美香の声がする。
涙混じりの鼻声……

馬鹿だね。
早く逃げなさいよ。

『私……ッ アユを置いていけない……』

どれだけ待っても助けは来ない。
十和は、来てくれない。

美香を助けられるのは私だけなの。

だから……

『早く行って! 美香……ッ』

無事に出て、幸せになるんだ。
幸成と、幸せになるんだよ……!

『十和を呼べ! 今すぐに呼ぶんだ!!』

ガッと鈍い音をたて、後頭部に痛みの波が広がる。

ヤバイ……
視界がグラグラ揺れる。

オーナーは、本当に私を殺す気だ。

『立て。 これくらいで死ぬなんて、笑わすな』

駄目だ……
意識が薄れてく……
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