空色(全242話)

規則的に鳴る音。
これは、聞き覚えがある。

……パトカーだ。



『……ッ貴様!!』

オーナーは血走った目で、私達を睨んだ。

敵を見つけ、襲い掛かりそうな肉食獣。
床にぺたんと着いた足が、ガタガタと震えた。


間もなくして乗り込んできた数人の警察が、オーナーの前に立ちはだかる。


『笹森オーナー。 貴方に逮捕状が出ています』

犯罪者に容赦のない、坦々とした口調。

笹森……?

そうか。
十和の苗字を聞いた時、誰かと同じだと思ったんだ。

オーナーか……

『私が何をした!! 証拠はあるのか!?』

『暑まで、ご同行願います』

あいつが、警察に従うわけがない。
いい大人が暴言を散らし、喚いている。

みっともない姿だ。

『あんたのした事のネタは上がってんだよ』

『十和ッ、貴様何を!!』

『幸成くんが俺にくれたんだ。 あんたが、ついこの間、大部屋でしていた事を録画した物を』

……録画?
まさか部屋にあったDVD?

『アユ達が映ってないからってね』

【行っちゃ駄目だ。
 本当に十和さんが好きなら】

馬鹿だよ、幸成。

このために私達を止めて、
こんな危ない事までして、

……大馬鹿だよ……


『貴様らッ、どこまで俺を虚仮(コケ)にしたら……!!』





―ッ……!?







一瞬だった。
一瞬で、床に大きな血溜まりが出来た。

ポケットから出た、サバイバルナイフ。

狙いは、足をすくわれ動けない私。

まるで本当の猪のような、猪突猛進……



『ッ十和!!!!』

でも何で?
どうして!?

『十和、十和!!』

どうして、私なんか庇うの!?

『……ッ嫌ぁぁー!!!!』

私なんて、死んだって良かったのに……
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