空色(全242話)



『わぁー…… すごい青空』

雲1つない青空が窓の外に広がる。

眩しい太陽の光りが差し込むベッドの上の十和が、眩しさに眉をしかめた。
……ような気がした。


あれから4日。
輸血も間に合い、手術も無事に終えたが、十和は眠り続けたまま。

【無駄な体力抑えて、治癒に専念してんすよ】

同じ病院に入院している幸成は、そう言って笑ったけど、私は笑えない。

このまま目覚めなかったら……
そんな事ばかり考えてしまう。


『十和が寝てる間、色々あったんだよ?』

酸素マスクでよく見えない顔を覗き込み、邪魔そうな前髪をかき上げる。


オーナーは逮捕された。
罪も複数で、取り調べに時間がかかるらしい。

それに藤原も……

中心人物がいなくなったBabyDollは、潰れるなんて噂もあるのよ?

だから私も美香も用無し。
幸成だって……
みーんなクビだよ。

『十和のおかげだね?』

永くて、暗い夜が終わる。

十和はきっと、そのために現れた。
そう言っても過言じゃない程の事をやってのけた。


でも、その十和の光は……




「……ユ……アユ……」

聞こえるはずのない声に耳を澄ます。

「アユ…… 愛してるよ?」

そんな事、あるわけない。
十和の声が聞こえるなんて……

「泣くなよ。 笑ってよ」

瞳が開く。
見間違いか、そうでないのか、

微かに瞼(マブタ)が揺れた。

『十和……?』

大きくて華奢な手を取り、頬に寄せる。

すると、それに反応したように十和の手は……
頬を撫でた。

『十和……ッ』

口も、微かに……?

『ァ……ュ……』

酸素マスクのせいで、上手く聞き取れない。

でも、確かに十和は私の名前を呼んだんだ。

『十和……よかった……ッ』

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