空色(全242話)
あっという間に2日が過ぎた。
検査や警察の事情聴取があって、目覚めた十和とまともに話したのは、3日目の今日が初めてとなった。
『父さんが見つかったんだってね』
私が言いづらかった十和のお父さんの行方。
警察は、何の躊躇(タメラ)いもなく伝えたらしい。
あの卑怯なオーナーは、事の発覚を恐れ、自分に一番近い場所へと隠した。
そう。
BabyDollの、硬い床の下へ……
『それで? やっぱアユは夜の仕事するんだ』
傷がまだ痛むのか、少し眉をしかめながら喋る。
『夜って言っても居酒屋とかだよ。 やっぱ時給いいし』
BabyDollを辞められたといっても、遊んでいられない。
実家にはお母さんがいるし、私が働かなきゃ。
『コンビニとかファミレスで働きなよ。 夕方で帰れるやつ』
『だって、それじゃ生活するので精一杯だもの』
『だからさぁ』
と、十和は私の手を引いて自分に寄せた。
バランスを崩した私は、寝たままの十和に倒れ込んでしまう。
『いってー…… まだ全っ然治ってないや』
『あ、当たり前だよ! すごい血だったんだから!』
焦って起き上がろうとするけど、十和の腕の力が強くて離れられない。
『傷口開いちゃうってば!』
『いいよ、いいよ』
よ、よくないってば!
『だから、アユはお母さんに送る分だけ稼げばいい』
『……え?』
『俺んとこにおいで?』
それって、もしかして、
十和が私を……?
『贅沢は無理だけど。 アユを不自由させないだけの力はあるよ』
『引き取って、くれるの? 私を?』
『引き取るんじゃないよ。 ただ、俺がアユを離したくないんだ』
十和が倒れたあの日。
それと同じくらいの涙が、十和の胸元を濡らす。
嬉しくて嬉しくて……
ただ頷く事しか出来なかった……