空色(全242話)
電車に揺られ、私達は青空を求めた。
私の我が儘にそうまでして付き合ってくれる十和。
そんな彼に疑問を抱きながら、車窓から見える風景を見ていた。
列車に飛び乗り1時間弱。
長い長いトンネルに入る。
『変な事、聞いていい?』
と突然、十和はそう切り出した。
『アユが働く理由は何?』
濁さず、真っ直ぐストレートな質問。
ごまかす事も忘れ、生唾を飲み込んでしまった。
『好きで働いてるってのは無しね。 前に好きじゃないって言ってたし』
トンネル内の真っ暗闇。
景色も何もない故に、十和から目を離せない。
いや、むしろ私が聞きたい。
こうまでして私に関わってくるのは何故だ?
何の得もないのに。
『じゃあ代わりに教えて。 何で私に構うの?』
真っ直ぐ、十和の瞳めがけて問い掛ける。
すると十和は、口の端を上げて言った。
『興味があるから。 それじゃ駄目?』
いやにアッサリと答えるものだから拍子抜けしてしまった。
『興味あるって、ああいう店で働いてる女にって事?』
『んーん。 アユに興味あるって事』
そんな事をさらりと……
しかも人前で言われ赤面しない女がいるだろうか。
いないはずだ。
それが例え、恋愛対象にない男が相手だとしても。
もちろん私の頬もカッと熱くなった。
いくらあんな仕事をしているからって、経験豊富なわけじゃない。
恋愛に関しては全くの初心者なんだ。
『可愛ー。 耳まで真っ赤』
真っ赤に染まった耳たぶに十和の指が触れる。
氷のように冷たくて一瞬、肩が跳ねた。
『ビクッてなんなよ、俺でも落ち込むっての』
違う。
十和が冷たいんじゃなくて、
私が熱いんだった。
何で、何で十和なんかに……