空色(全242話)

男達の手が乱暴に、私の身ぐるみを剥いでいく。
オーナーは依然、ベッドに座ったままそんな私を見ていた。

その目が嫌い。
その口が気持ち悪い。

姿、形、言動。
全てに嫌悪を感じた。


『綺麗な身体だ』

オーナーは、ショーツ1枚の憐れな姿にそう言って、口角を上げる。

『だが、少しつまらない』

と突然、何があったのか。
左頬にパーンと平手を受けてしまった。

ショックで痛みもなく、ただ熱を持つだけ。

『その綺麗な身体を、俺が汚してやろうか?』

「早苗のように」
そう付け加えて舌なめずり。
その姿にゾッとした。

手首を拘束したロープの先を男達に掴まれていて逃げる事すら出来ない。
あっという間に馬乗りにされてしまう。

『色が白いな……』

背中に生温い息がかかる。
下から上へ……舌が這う。

『や……ッ』

死ね、死んでしまえ!
死んでいなくなってしまえ!!

願っても変わらない状況に涙が静かに流れた。

と、その時だった。

『大変です! 早苗ッ 早苗が!!』

息を切らした美香が、部屋の扉を開けたのは。
突然射した光に目をしかめる。

『早苗がどうした』

『早苗が逃げました!!』

美香の言葉にオーナーは「ちっ」と舌打ちし、私の上から立ち退いた。

『追うぞ、藤原』

『はい』

間一髪……
オーナーと黒服の男達は私を捨て、部屋を出ていった。



『大丈夫!?』

部屋に2人だけになると同時、美香はシーツを私の肩にかけて言った。

素肌にシルクの肌触りが気持ちいい。

『ありがと……美香』

『ううん。 早苗には悪いけど、私はアユの方を助けたかった』

美香は少し目を伏せ、そのまま黙ってしまう。

そうだ。
今、私がこうして助かったのは早苗の犠牲のおかげだ。

『ねぇ、美香。 早苗は大丈夫かな』

『わからない……ね』

元を辿れば早苗が悪いのだけれど、犠牲になった早苗を思うと胸が痛くなった。
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