空色(全242話)
頭の中、十和一色。
それも次に目が覚めた時には、嘘のように消えていた。
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from:美香
subject:(^O^)/オハョ
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今日のお迎えゎ幸成くん
だょ☆
私も乗ってくからよろし
くね!
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美香からのメールだ。
いつ入ったんだろう。
全然気がつかなかった。
『幸成、か……』
十和の事で忘れていたけど、幸成とキスしてしまったんだった。
思い出すだけで気持ちが悪い。
そんな奴に送ってもらうなんて、なんだか気が重いな。
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to:美香
subject:
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ごめん…
お店に行く前に用事があ
るんだ。
タクシー使って行くね!
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送信ボタンを押し、携帯を閉じる。
毎日こうして避けるわけにいかないって解ってる。
でもなるべく、後回しにしたかった。
携帯を鞄に入れ、簡単にメイクする。
全ての仕度がととのうまでに、10分とかからなかった。
アパートから少し歩いた大通りでタクシーをつかまえると、後部座席に乗り込んだ。
『深神町の西通りまで』
運転手は私の言葉に顔を上げ、バックミラーで私の顔を確認した。
『西通りですねー』
その後で、ゆっくり車を走らせる。
西通りは別名、ピンク通りと呼ばれる歓楽街。
ヘルス、ソープ、キャバレー、ホストクラブ。
通り沿いの店のほとんどがそういったもの。
きっとタクシーの運転手は瞬時に私の職業を察したのだろう。
そして顔を見たくなったに違いない。
歓喜の眼差しか。
はたまた汚物を見るような目か。
どちらにしろ、気分のいいものではなかった。