空色(全242話)
たまに思う時がある。
私は一体、何処まで落ちていくのだろう。
考えた所で答えなんて無いけれど、考えずにはいられなかった。
『最低……』
BabyDollから少し離れたコンビニで、つい言葉を漏らしてしまった。
目の前の本棚にある風俗情報誌。
なんと2ページを使い、デカデカとBabyDollの姫達が紹介されていた。
しかも私は当店のイチオシ娘。
《B89 W57 H86》
《笑顔の可愛い二十歳のアユちゃん》
《その可愛い顔からは想像つかない程のテクニシャン》
……って馬鹿な。
女のスタイルに幻想を抱きすぎだよ藤原。
正確なのはヒップだけ。
バストは85、ウエストは60だ。
確かに見かけじゃ嘘とわからないだろうけど、少しやり過ぎだ。
『ありがとうございましたー』
何だか面白くて、雑誌を手にコンビニを出た。
明日、美香に見せてあげよう。
『あ……』
私、今なんて?
美香に見せる?
一体どうやって?
【許さない、絶対に】
あんな言葉を吐いておいて、雑誌なんか見せられるわけがない。
もう美香と話す事すら、出来ないかも知れない。
そう思ったらまた目頭が熱くなった。
涙は女の武器だなんて、
私はそうは思えない。
泣く事で自分の弱さを見せるなんて、恥ずかしい事だと思ってる。
だから泣かない。
上を見て、ジッと涙を堪えるんだ。
『綺麗』
視界に広がる満点の星空。
今の私に不釣り合いな程、澄んだ空だった。
《ブブブブブ》
と突然、ポケットに突っ込んでいた携帯が小さく震えた。
どうやらメールが来たらしい。
相手は、
『美香……』
何故か、美香だった。
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from:美香
subject:大スキなあゆへ☆
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今日ゎ突然で驚かせちゃ
ったよね、ごめん…
明日も仕事がんばろぉ!!
おやすみなさい☆
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あんな暴言を吐いた私に、なおもメールをくれる美香。
そんな美香に堪えていた涙は溢れ出てしまった。