空色(全242話)
藤原がオーナーの代わりを勤めるようになってから、もう店は目茶苦茶だった。
暴力、脅迫。
強姦まがいの事もあった。
『アユ。 うちら、どうなるのかな……』
いつもの鏡台前、美香がポツリと呟いた。
私はそんな美香の言葉を聞かないふりで、コスメポーチのチャックを閉めた。
私達は一体、どうなってしまうんだろう。
いつ解放されるんだろう。
この身が老いて、使いものにならなくなったら?
でも、それじゃ遅いんだ。
私達は皆、19や二十歳の女の子なんだ。
遊んだり、恋をしたり、
今しか出来ない事がいっぱいあるんだ。
早く、こんな所から出なきゃいけない。
『さぁ、もう一仕事してくるかぁ』
パンパンとフェイスパウダーを叩き込み、美香が立ち上がる。
逃げなきゃいけない。
そう思うのに、日常に流されていく。
私を含め、大半の人がそうだった……