空色(全242話)
全てを見透かしたような、漆黒の瞳。
その瞳に映る自分の顔が何だか可笑しかった。
眉間にシワを寄せ、目は見開き。
そして口は、なんと半開きのままじゃないか。
話に引いたのは十和じゃなく、私だったようだ。
『なんてね』
と突然、十和はヘラっと笑う。
『だから俺もアユと一緒って事で』
あ、ああ。
話の続きか。
『アユだけが悪いんじゃないよ』
真剣だった顔が無邪気な笑顔に変わる。
一体、どこまでが本気なのか。
よくわからなくなる。
『それより、今度いつが休み? アユの家まで迎えにいくよ』
話題を変えるのは、何故か。
深く突っ込んでほしくないから?
そう思えてならない。
『来週、一週間くらい休むよ』
携帯の待受に表示されているカレンダー。
それを見せて答える。
『来週の何曜日?』
『来週の……』
何曜日かと聞かれても困る。
来週、※生理休暇をとる予定でいるだけなのだ。
(※生理を理由でもらえる休み)
『多分、水曜あたり』
『確実じゃないんだ?』
『うん、ちょっとね』
十和はカレンダーと睨めっこしながら考えているよう。
あ、睫毛(マツゲ)長いんだ。
鼻も正面から見る以上に高いんだなぁ。
あまり見る機会のない横顔に、つい見入ってしまう。
『私、休み入ったらメールするよ』
十和の横顔に向かいそう言うと、ようやく目が合い満面の笑みをくれた。
『朝一で行こうな!』
どれだけ素直なんだか。
今まで騙されたりもせず、よく生きてこれたものだ。
【死んでいい人間。 1人くらいいると思う】
同じ人間の口から出た言葉なんて、
とても思えないよ。