空色(全242話)
『お疲れ様ー』
午前0時で、ようやく今日が終わる。
今日はあまり稼げなかったせいか、とても永く感じた。
帰って温かいお風呂に入ろう。
その前にコンビニ寄って、酎ハイでも買って行こうかな。
店の外に出るとピューと冷たい風が吹き荒れていた。
『寒……』
ああ、そっか。
今日は歩きなんだ。
寒さのせいで思い出してしまった。
幸成の車が、店の前で待機する光景。
ってか、幸成が休みなら誰も送ってくんないのかよ。
【明日は他の者が来るんで】
もしかして行きは幸成が他の人にお願いしてくれたのかな……
『まさかね』
だとしたら、帰りもお願いしとけっつーの。
我ながら理不尽な事を思いながら、歩き出す。
途中、見つけた小石を藤原に見立てて蹴ってやった。
こいつ、どこまで蹴っていってやろうか。
川か? 沼か?
しかしそこに到達する前に、小石は路肩のドブに落ちた。
でもなんだか気分がいい。
『なぁにやってんすか? 小学生じゃあるまい』
と、突然かけられた言葉に顔を上げる。
そこにいたのは、
『……幸成』
いつもの黒服でなく、カジュアルな私服を纏(マト)った幸成だった。