空色(全242話)

『お疲れ様ー』

午前0時で、ようやく今日が終わる。
今日はあまり稼げなかったせいか、とても永く感じた。

帰って温かいお風呂に入ろう。
その前にコンビニ寄って、酎ハイでも買って行こうかな。

店の外に出るとピューと冷たい風が吹き荒れていた。

『寒……』

ああ、そっか。
今日は歩きなんだ。

寒さのせいで思い出してしまった。
幸成の車が、店の前で待機する光景。

ってか、幸成が休みなら誰も送ってくんないのかよ。

【明日は他の者が来るんで】

もしかして行きは幸成が他の人にお願いしてくれたのかな……

『まさかね』

だとしたら、帰りもお願いしとけっつーの。

我ながら理不尽な事を思いながら、歩き出す。

途中、見つけた小石を藤原に見立てて蹴ってやった。

こいつ、どこまで蹴っていってやろうか。

川か? 沼か?

しかしそこに到達する前に、小石は路肩のドブに落ちた。
でもなんだか気分がいい。

『なぁにやってんすか? 小学生じゃあるまい』

と、突然かけられた言葉に顔を上げる。

そこにいたのは、

『……幸成』

いつもの黒服でなく、カジュアルな私服を纏(マト)った幸成だった。
< 99 / 243 >

この作品をシェア

pagetop