おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
あーあーと叫びながら耳を塞いで、尚も笑う頼子を睨んだ。
けれどどこかで声がする。
それでも、……キスはしてるじゃん。
その事実は頼子にすら、言えていない。
なぜなら、その記憶は私にとって嫌悪以外のナニモノでもないからだ。
封じ込めて、封じ込めて
見ないようにしてきたのに。
「……ま、なんとかするしかないんだけどさ……」
ぽつりと呟くと
「まあ、もし本当に嫌になったら私の家に逃げて来な。匿うくらいだったら出来るから」
そう笑って答えた頼子に、私は少しだけ感謝した。
―――季節は、夏の始まり。
まだ涼しさの残る風が吹く、6月下旬のことだった。