おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー


今日はもう家にいるのだとわかった途端、泣きたいような気持ちに駆られた。
こんなんじゃ今からやっていけるわけないじゃない、と自分を叱咤するけれど、でもどんな顔して会えばいい。


二年という歳月は私にとってはとても、とても長かったのだ。


「兄さんはすぐ行くの?お茶でもしていけば?」


「いや、高速に乗る前に向こうに持っていくお土産を買っていきたいから、もう行くよ。
申し訳ないね、慌ただしくて。また来週こっちに来るからその時ゆっくり挨拶させてもらうよ。文雄くんにも宜しくね」


文雄くん、とは晴子さんの夫、つまり私の叔父にあたる。


「じゃあ美琴、迷惑かけないように、元気でやってな。とりあえずまた来週はこっちに寄るから」


「うん、そっちも車、気をつけて」


そうして父は軽く手を振って去っていった。
姿が見えなくなると、寂しさがじんわりと胸に沁みてくる。


「よし、じゃあミコちゃんは荷物部屋に置いておいで。ひと段落ついたら下に降りてきてね。お茶にしましょ」


晴子さんの明るい声に押されて、私は二年ぶりに蓮見家へと足を踏み入れた。


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