おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「……座ったら?」
どこにいれば良いかわからないで立ち尽くす私をチラリと見て達久が言った。
声が低い。
耳をくすぐる違和感は、否が応でも私と彼の間に横たわる時間の差を感じさせた。
床に座るのもなんだか違うかなと思い、結局達久が座っている向かい側、ベッドの端にそっと腰掛けた。
そして視線を感じる方へ、私も視線を伸ばす。
じっと私を見つめるその目は、やはり何を考えてるか分からなかった。
もう少し気まずい空気を出されるかと思ったのに、と心の中でため息をつく。やっぱりこれじゃあ私の方が何か悪いことをしたみたいに気が重いじゃないか。
「……ひ、久しぶりだね」
何を言うかなんて考えてなかった自分が恨めしい。ようやっと絞り出した言葉は無難以外のなにものでもない。もっと罵ってしまうかと思ったのに結局私はビビリなのだ。
「久しぶりなのは、ミコ姉が避けるからだけど」
返された言葉は皮肉だ。驚いて達久の顔を凝視する。
変わらない綺麗な顔。けれど二年前とは明らかに違う、眉を顰めて笑うその表情は私が見たことのない顔だった。
「だって、それは……っ、あんなことされたら避けるでしょ!?」
カッとなって声を荒げると、達久はまた笑みを深くした。
嫌な笑い方だ。
その顔は、なんだかすごく不快だった。
「でも一緒に住むってなったら、ミコ姉、俺に媚び売ってくるんだね」
その言葉に面食らう。まさかそんな事を言われるとは思わなかった。
だって、こんな事、私が知ってる達久は言わない。
「こんな事にならなかったら、どうせ俺に話しかけもしないくせに」