おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「……っ」
「父さんと母さんに俺たちの関係が破綻してるってバレたくなかった?
さすがにやって行き辛いと思ったから、関係を修復しに来たんだろ。ここまで無視しておいて今更体良く仲直りしましょうって?」
図星だった。私の浅はかな部分を、汚い部分を、達久は手に取るように分かっている。
そのことが、恥ずかしくて堪らない。思わず下を向いてギュッと目を閉じた。
「……ミコ姉」
達久が椅子から立ち上がる音がする。
そっと気配が近づいて、私の前に膝まづいたのも感じた。
「都合良すぎない?」
くす、っと笑われたその空気に堪らなくなって顔を上げた。
ひどい、と思った。
でもどっちが酷いんだろうとも思う。
達久はあのキスで私を傷付けたけど、私はこの二年で達久を傷付けていたんだと今さら気付いた。
そして私が、自分の都合で仲直りしに来たことが……彼をまた、傷付けた。
達久の言うとおりだ。
こんな事にならなきゃ、私は彼とこれからも話す気なんてなかった。無視し続けるつもりだった。
懇願するべきは、私の方だ。
「……都合良すぎなのは分かってる。それでも、また、前みたいに普通に接して欲しいの」