おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「……ばか」
「うん」
「……嫌い」
「そう」
「許さないから」
「……うん、許さないで」
「……なんでそんなこと言うのよう………」
ぼろぼろと涙がこぼれた。
私は、許したかったのだ。そうしてこの家で、上手くやって行きたかったのに。
これじゃあ本当に私たちの関係は決裂してしまったじゃないか。
「なんでキスなんてすんのばか達久ぁ……」
それでも表面上はこの従兄弟と上手くやらなければいけない。これからの生活が億劫で億劫で仕方無かった。
いつからこんなに彼は歪んでしまったのだろう。
私への嫌がらせのためだけにどうしてこんな事するんだろう。
私のことがそんなに嫌いになってしまったのだろうか。
……私がすぐに許さなかったから、怒ってるんだろうか。
そのどれも、答えではない気がした。
彼はきっと、本当に私に許しなど求めていない。だったら彼は、何を求めているんだろう。
「あんたが分かんない、達久」
「……だから嫌いなんだよ、ミコ姉のこと」
「ほんとムカつく……」
そうしてしばらく泣いたあと、部屋に戻ると呟いて、私は彼の部屋を後にした。