おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「……持つ」
帰り道にあるスーパーで食材を買って帰路につこうというとき、私が持っていた袋を達久が持ち直した。
「いいのに、軽かったし」
「だからだよ。傘の方が重そうだから、ミコ姉は傘担当ね」
「え、ずるい」
「早いもん勝ち」
意地悪く笑った達久を軽く睨んでから傘を広げた。
そう言いながらも、本当は買ったものの方が重いことなんてお互い気付いている。
「もうちょっと俺の方に傘ちょうだいよ」
「これ限界」
「そう言いながら自分の方に傘寄せるのやめたら」
軽口を叩いていると家にはすぐ着いた。
鍵を取り出すと、今朝思ったことが蘇る。
「そうだ、キーホルダー買おうと思ってたんだ」
達久がこちらを見たので、生身の鍵を目の前に掲げてやる。
「これじゃ失くしちゃいそう」
少し何かを考えた後で、達久は言った。
「……あのときのキーホルダー、あるけど」
「あのときって?」
「……持ってくる」
声が少し強張っていたのはどうしてだろう。
家に入ってすぐに二階に行った達久を首を傾げて見送って、私はキッチンへ買い出したものを置きに行った。