おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー


「このときは可愛かったんだけどなあ……」


ここにはいない眼鏡のことを思い出して苦笑する。


達久とは、放課後に買い出しに行った月曜日以降、実はあまり話していない。
用事もないので話すこともないのだけど、よくよく考えたら塾やら部活やらで平日どころか休日も顔を合わせないことの方が多いのだ。


表面上は仲良くする!と意気込んだものの、拍子抜けするくらい平和に暮らせている。


「そういえば今日達久くんは?」


アルバムを見ていて思い出したらしく、父はきょろきょろと部屋を見渡す。


「4時までサッカーの試合なんですって。そこから塾だから、帰ってくるのは夜ね」


「頑張ってるなあ」


このまま平和に一年が過ぎると、来年の四月には達久は別の高校に行く。男子校かつ全寮制ということで、この家を出ることになるらしい。どうしよう平和すぎる。ぜひこのまま受かってほしい。


「……頑張れ達久!」


いろんな私情が混じりながらつい声が漏れてしまったけれど、父と晴子さんがうんうんと頷いているのを見て逆に申し訳無くなってしまった。


< 42 / 77 >

この作品をシェア

pagetop