おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「実はね、山桐さんにお願いがあってきたの」
「……お願い?」
チラリと頼子を見ると、佐和田さんを死んだような目で見つめながら、ひたすらパクチーを口に入れている。
その目から察するに考えていることは私と同じだろう。すなわち、知らない人からのお願いほど怖いものはない。
すると、彼女はぱんっと目の前で両手を合わせて、祈るように私を見上げてきた。
「わたし、蓮見くんと付き合いたいの!協力してくれないかな?」
言われた言葉に、え、と固まる。
……お願いがまさか、そんなことだとは。
「ちょっと、蓮見くんて誰よ」
「蓮見達久くん。山桐さんの従兄弟」
頼子の質問に私の代わりにスラスラと答えた佐和田さんに、ああこの人は私と達久の関係を知ってここにやってきたのだと知る。
「私、サッカー部のマネージャーやってるんだけど、蓮見くん誘っても全然デートとかしてくれないんだ。二人っきりじゃなくて、例えばサッカー部の部員同士何人かでどうって言っても断るの。もうどうしていいかわからなくて、藁にもすがる思いでここに来たってわけ」
私はどうやら藁だったらしい。
真剣に語る佐和田さんの横で、なんだかなあ、と微妙な気持ちになる。
「……でも、私そこまで達久と仲良くないよ。私から言ったところであの子が気持ちを変えるなんて思えないんだけど」
「大丈夫、山桐さんができる範囲のことしかお願いしないし、見返りも用意するから」
「「見返り?」」
その単語で、私と頼子はずいっと前に出る。
ギラギラと光らせた目に調子を良くしたのか、佐和田さんもずいっと身体を前に出して、密やかにこう言った。