おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
その日の夜、私は達久の部屋の扉をノックした。
昔はノックなんてせずに入っていたけれど、15歳ともなれば色々差し障りがあるかなという私なりの配慮だ。
「達久入っていいー?」
「……どうぞ」
ガサゴソと音がして、しばらく間があったことからいま絶対何か隠したと確信する。
「いまなんか隠した?」
「部屋来て早々そのセリフは無い」
「えー、でも隠した音したよ」
「……ミコ姉って絶対モテないだろ」
ため息をついて、達久はベッドの上に散らばってたプリント類をまとめ始める。
どうやら学校で渡されたプリントの整理でもしていたらしい。だったらさっきのガサゴソという音もこれだったのかもしれない。
「つまんない……」
「ほんと何しにきたの」
眼鏡の奥から訝しむ視線を向けられて、このままでは本題に入る前に追い出されそうな気がした。
慌てて取り繕うように本題を口にする。
「あの、実は少し聞きたいことがあって」
なに、と先を促されて、さっきまで悠里と電話で話したことを反復した。
「達久って彼女いるの」
「……なに、いきなり」
驚いたように目を見開かれて、たしかに直球すぎたかもしれないと後悔する。気まずさを隠しきれずに視線をおもむろに達久から外す。恋バナなんてほとんど達久としたことが無い。どうも居心地が悪いまま言い訳めいた言葉を並べる。
「えっと、ちょっと最近周りがそういう雰囲気というか夏も近いしというか」