おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「片想い、してるの?」
「もう長いことしてるね」
そう言って達久はプリントを机に置いて、ベッドにどかっと腰掛けた。
昔私が達久の部屋に置いていった、大きめのアルパカのぬいぐるみをなんとも無しに触りながら彼は何かにーー誰かに想いを馳せている。
そんな姿、見たことない。
誰かを想う達久なんか、らしくないと思った。
「つらいの、片想いって」
「どうだろう。でもいまはけっこうツライかもね、拗らせてんの自分でも分かるし」
「……告白、すればいいのに」
「はは、簡単に言ってくれるね」
アルパカをこちらに向けて、まるでその声真似でもするように『そんな簡単じゃあないでごわす』とアルパカの長い首をブンブン振りながら達久は言う。こういう遊びは昔よくやったやつだ。
同じように私もベッドの端っこから今度はキリンのぬいぐるみを取り出して(これは達久の誕生日に私があげたものだ)、『どうせお前は振られるでやんす』と声真似をしてアルパカに対抗した。
『誰も好きになったことないくせにツベコベ言うなでごわす』
『うるさいでやんす。この口はへし折ってやるでやんす』
どかん、とキリンをアルパカに体当たりさせると、達久がふはっと笑った。
それにつられるように私も笑ってしまう。