おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー


けれど認めるのが悔しくて、私は強がりを言う。


「……そ、そうよ」


まだ私は、達久の“上”でいたいのか。
なんでも分かっていた、確かに達久の“お姉ちゃん”だった、あの時のように。


「さすがミコ姉ちゃん」


私の意図を汲んだような、小馬鹿にした挑発に、私は達久を睨むことしかできなかった。


「用事、もう無いなら部屋帰ったら」


アルパカとキリンをベッドの端に追いやって彼は言う。
2匹が倒れるようにして影に追いやられるさまを、昔の楽しかった思い出を記憶の脇に置かれたように感じて、変わってしまった自分たちにため息をつきたい気分だった。


「言われなくても帰る」


「……おやすみ、ミコ姉」


おやすみ、と返そうとして、ふとまだ悠里に頼まれたことを言っていないことに気付く。


「達久」


「なに?」


「中等部も来週テストで、終わったら夏休みなんだよね」


「そうだけど?」


何を当たり前のことを、とでも言うように見つめてくる達久。
私だって、こんなこと言うのはとても億劫だけれど、これも自分のためだと腹に力を込めた。


「……夏休みの部活ない日、ちょっと付き合って欲しいとこあるんだけど」


「は?」


訝しむような視線に耐え兼ねて、お願い、と小さく呟く。
私だってあんたとどこかに楽しく出かけたいわけじゃないんだ。むしろ楽しくサッカーでも勉強でも勝手にしてくれと思うけれど、これも悠里……というかテストのためなのである。


「……いいけど」


たっぷり30秒の沈黙の後で、私は達久の了承を勝ち取ったのだった。

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