おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
05 きつねうどんは、せめて優しい味だといい
次の日の昼休み、悠里はまたうちのクラスに来た。
昨日のように私と頼子の間に椅子を引っ張って来て、まるでそこが大昔から定位置だったとでも言うように私の机にお弁当を広げ始める。
「ちょっと悠里、もっとそっち寄って」
「えー、私も狭いんだけどお」
「ていうかなんでここであんたが弁当食べてんのよ」
頼子もぎゃいぎゃい言って迷惑そうに顔をしかめるものの、思ったほど嫌がってなさそうだ。かく言う私も、昨日いきなり悠里から電話が来て達久のことで色々頼まれたりしたのだけど、この人懐っこさは不快ではなかった。
思ったことがそのまま声や態度に出るところがどうも憎めないのである。
「ねえ、達久くんどうだって?」
さっそく声を高くして、意気揚々と悠里が話しかけてくる。
食堂で買ったお弁当のちくわの天ぷらを頬張りながら、どう言ったものかと考える。
昨日達久は片想いをしている相手がいると言っていた。それもわりと長い期間。
その相手が悠里な可能性もあるけれど、そんなに昔から知り合いだったのだろうか。
「悠里って達久といつ知り合ったの?」
本題からずれた話題に、少し不満そうにしながらも悠里は律儀に指折り数えて計算しだす。
「ええっと、中等部と高等部の合同練習が始まったのが今年の3月からで、その前は見たことなかったし……ってことは、1、2、…5ヶ月くらいかな、知り合ってからは。気になり始めたのは先月だよ、彼氏と別れてからだからっ」
「……切り替え早…」
頼子の言葉に、こんくらいフツウだよと悠里は返す。
いくら何でも知り合って5ヶ月の相手を、あんな意味深にずっと片想いしてるなんて達久も言わないだろう。片想いの相手は少なくとも悠里ではないようだ。
駄目だったら次行けばいいんだよ、とサラリと答えた悠里に、これくらいメンタル強かったら達久に別に好きな人がいても大丈夫かもしれないと思った。