おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー


夏といえば、と思ったところでちょうどコンビニに着いた。
コンビニの外にでかでかと貼っているポスターに、やっぱりそろそろだったことに気付く。


「夏祭り、もうすぐじゃん」


同じポスターを見ていた達久も、私と同じことを考えていたみたいだ。


「楽しみだよね、もうテストも終わってる頃だし。
毎年だいたい休みが始まってすぐやるから、私にとって夏の始まりって感じがする」


「……もしかして、付き合ってほしいのって、これ?」


立ち止まって、達久を振り向く。
何かを窺うように、私の目を見つめている。


ーー夏休みに入ったら、付き合って欲しいとこがある。


少し前のあの言葉を指しているのだということは、言われた瞬間から分かっている。
別に夏祭りに付き合って欲しかったわけじゃないけれど、確かにこれは良い口実になりそうだなと思った。


「……あ、うん」


そしたら悠里だって、浴衣とか着て達久にアピールできるだろう。二人っきりにさせたかったら、私は人混みに紛れてはぐれてしまえばいい。
頭の中で作戦を立てて、これは案外妙案だったかもしれないとひとり頷く。


「む、昔は良く一緒に行ったからさ、久し振りにどうかと思って。塾もいいけどさ、息抜きだって大事だよ」


完全に後付けの理由を最もらしくペラペラと唇に乗せて、へらっと達久に笑いかけた。
そんな私を、達久はやはり何かを見極めるかのように……探るような瞳で眼鏡の奥から見つめてくる。


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