おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「……でも、達久、付き合ってくれるって言った」
隠し通すことなんてできないことは、容易に分かった。
だからといって認めることも、悠里のことをばらすわけにもいかない。
だったら、彼が結んだ約束を、再度持ち出すまでだ。
けれど彼は首を横に振る。
「なにか含みがあるなら、行きたくない」
炎天下の中で、焼き付けるようなアスファルトのせいで、私の体温は上がる。
頭もぼうっとしてきて、考えるのも億劫になってきた。
コンビニは目の前だというのに、まだ入ることもできていない。
「お願い達久、言うこと聞いて……」
「それなら俺を誘う理由を言いな」
「……。あんたと仲良くなりたいからだよ」
「そんな見え透いた嘘、よく言えるね。ミコ姉の嘘つき」
「……っ、そうだよ嘘だよ!」
顔を上げる。こんな場所で言うべきことじゃない、と分かっていた。でも、いまこの瞬間、言わずにはいられなかった。
それは彼への拒絶と、私の意地が、ないまぜになった言葉だった。
「私が、達久と一緒にいたいはずないじゃない! 一緒に出掛けたいなんて、思うはずないっ!」
この言葉が本当に思って出た言葉かどうかなんて、今の私にとってはどうでも良かった。
嘘つきと言われてカッとなった。本当のことを言われて悔しかった。……だから、代わりに彼を傷付けようと思った。
そしてその言葉をぶつけた瞬間、達久は僅かに眉を顰めて、ぎゅっと唇を引き結ぶ。
それは昔から、達久が悲しいのを我慢するときの癖だった。
……私は、達久を傷付けることにどうやら成功したらしい。
けれどその顔を見た瞬間に、今度はジクリと自分の胸がえぐられたように疼いた。
まるで突き刺したはずの刃が自分の胸に刺さったように。