おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
言った言葉は戻ってこない。
さっきまであんなに暑かったのに、その事実が、体温をどんどん下げている。
「……分かってたよ、そんなこと」
ぽつりとこぼされた言葉が悲しくて、自分で傷付けたのに、どうしようもない後悔しか湧き上がってこなかった。
「どうしても、理由は言えないんだ?」
聞かれて、こくりと頷く。
一緒に出掛けたくないのに、わざわざ誘ったということは、何かあるといっているのと同じだ。
含みがあるとバレてしまった以上、断られるかもしれない。
……悠里には謝るしかない。
でも、それでいいような気がした。
傷付けただけでなく、行きたくない場所に達久を無理矢理行かせることが、いまはとても心苦しい。
「……今回だけなら」
黙っていると、そんな言葉が上から落ちてきて驚いて顔を上げる。
「……え」
「なにをそんなに驚いてんの。……行くって言ってる」
「だ、だって、何かあるって言ってるようなもんなのに、なんでいきなり行こうって思ったの…!?」
さっきまで含みがあるなら行きたくないと言っていたその口で、今度は行くと達久は言う。
どうしてそうなったのかまるで分からなかった。
「どうしても理由を言わないのに、俺と一緒にいるのだって嫌なのに、頑なに誘ってくるってことは……俺が行かなきゃミコ姉、困ることになるんじゃないの」
その言葉に目を見開いた。