おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「良かったじゃん、佐野で」
頼子の言葉に大きく頷く。
「にしても、俺を誘うってことは、悠里ってもしかして俺のこと好きなのかな…なんて思っちゃってるんだけど、そこんとこどう思う!?」
「……は?」
いきなりの佐野の言葉に思考が一度停止する。
「悠里可愛いし良い子だよなあ、まさか向こうもそんなふうに思ってくれてるなんて俺気付かなくてさ…。美琴、明日、頼んだぜ!」
「……うわあ面倒くさいことになった」
隣で、私にしか聞こえない声音で呟いた頼子の言葉が、まんま今の私の気持ちだった。せめて目の前にいる親友だけでもこの面倒ごとに巻き込んでやろうと、おずおずと顔を上げる。
「頼子、明日ヒマだったりしない……?」
「ごめんバイト……」
頼子という名前なのに頼りにならない親友と、頭の中お花畑のクラスメイトを交互に見やって、途方に暮れた気持ちになった。
先ほどまでの安堵はどこに行ってしまったのだろう。
明日は四人それぞれが色んな気持ちを抱えながら、夏祭りというミッションをこなさなければならないのだ。
「……バイト代わろうか?」
「美琴、歌うたいながらアイス作れんの?」
「すみませんでした……」
かくして、私の夏休みは憂鬱な気持ちで幕開けとなった。