おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「手を離しちゃ駄目だって言われてたのに、ミコ姉ってば俺のことほっといていなくなってさ」
まるで今でも根に持ってるようにジトっとした目で見られて、慌てて私も反論する。
「あれは達久が射的やりたいとか言って動こうとしなかったからっ」
「ミコ姉だって、ヨーヨーが欲しいとか言って居なくなったろ」
「うー…」
お互いさまなのだけれど、私の方が年上だったから、私が気にかけていなければならなかった。
悪かったことは自覚している。
「ご、ごめんなさい……」
素直に謝ると、達久はため息をつく。
「また探しに行くの面倒だから、今日は勝手にはぐれないこと」
「はい……」
「よろしい」
ふっと笑って、達久は私を見つめる。こんな風に素直に返事をした私が珍しかったのだろうか。
けれど、注がれる優しい眼差しに、ぶわりと罪悪感が生まれた。
……はぐれようと思ってるのに。
達久と悠里が二人っきりになれるように、途中ではぐれる作戦なのだ。
もし今日また達久からはぐれたら、彼はなんて言うんだろう。
呆れるだろうか、馬鹿にするだろうか、……心配、するだろうか。
小学三年生の私は、どうだった?
達久の手が、繋がれてないことに気づいたときーー私はなんて思ったんだっけ。