おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
「あたしは大丈夫だって言ったんだよ?
母親いないから家事だって一通りできるし、お父さんも帰り遅いからいままでだって半分一人暮らしみたいなもんだったし」
でも、そこはやはり親なのだろう。高校生が自分の目の届かなくなる場所で一人暮らしなんて、心配で仕方ないらしい。
「まだ早いってさ。親戚の……お父さんの妹の家に高校卒業まで預かってもらうことになった」
「へー。まあ、良かったんじゃん?
やっぱ一人暮らしはさ、大変だと思うよ。特に受験生になったら家事とかやってらんないし」
「………まあ、ね」
「なに、嫌なの?」
きょとん、とした顔で聞かれて私は黙ってしまう。
もちろん、これが最良だと分かっている。二年前まではしょっちゅうあの家に入り浸っていたし、叔母や叔父も母親のいない私を常に気遣ってくれる。
居心地は良いし、学校からの距離もむしろいまより近くなる。
はあ、ともう一度だけ溜め息をつく。いくら叔母たちが優しかろうと学校が近くなろうと、それは私にとっての問題ではなく、つまるところ嫌か嫌でないか聞かれたら、こう答えるしかない。
「まあ、嫌だよね。……叔父や叔母は私を可愛がってくれるけどさ」
それに頼子は眉を寄せて、心配そうに私を見つめた。
「確かにやっぱり他人の家にひとり入るのって勇気いるよね。その家の空気とか、どのポジションにいるべきか、とか」
「ポジションて」
はは、と笑って。
確かになあ、と納得する。
やっぱりもう出来上がっている家にひょいっと放り込まれるのにも不安はある。
……けれど、それ以上に。