おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー
ん、とグラウンドに目線を向け、頼子にも見るよう促す。
「なに?……ああ、中等部の子たちだ。何だろ、見学に来てんのかな」
放課後のグラウンドには陸上部とサッカー部がいる。
どうやらクラス単位で見学に来ているらしく、数十人の中等部の子たちがフェンスの手前を陣取っていた。
「あれ、中等部三年の子たち。
あの中に従兄弟いる」
「え、従兄弟? どれ」
「あーれ」
窓の縁にもたれかかって、ひとりの男子生徒を指差した。
「あれったっていっぱい人いるからわかんないよ。とりあえず女?男?」
「……男」
言った瞬間、あーなるほど、と頼子は笑った。
「だから憂鬱なわけだ、預けられんの」
「まー、そうだね」
本当は男子だから、という理由じゃない。
あれから。あの、キスの日から。
私は彼――達久(タツヒサ)と一度も話していないのだ。
「中3かあ。あれだね、ヤリたい盛りだね。そりゃあ一緒に居たくないわ」
ケラケラ笑う頼子に一発蹴りを入れる。
「そういう意味じゃない」
「じゃあなに?あんたが意識しちゃうとか? いいじゃん、従兄弟。ギリ結婚できるし」
「なんで従兄弟とそうなんのさ、やめてやめて」