おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー


ん、とグラウンドに目線を向け、頼子にも見るよう促す。


「なに?……ああ、中等部の子たちだ。何だろ、見学に来てんのかな」


放課後のグラウンドには陸上部とサッカー部がいる。
どうやらクラス単位で見学に来ているらしく、数十人の中等部の子たちがフェンスの手前を陣取っていた。


「あれ、中等部三年の子たち。
あの中に従兄弟いる」


「え、従兄弟? どれ」


「あーれ」


窓の縁にもたれかかって、ひとりの男子生徒を指差した。


「あれったっていっぱい人いるからわかんないよ。とりあえず女?男?」


「……男」


言った瞬間、あーなるほど、と頼子は笑った。


「だから憂鬱なわけだ、預けられんの」


「まー、そうだね」


本当は男子だから、という理由じゃない。


あれから。あの、キスの日から。
私は彼――達久(タツヒサ)と一度も話していないのだ。


「中3かあ。あれだね、ヤリたい盛りだね。そりゃあ一緒に居たくないわ」


ケラケラ笑う頼子に一発蹴りを入れる。


「そういう意味じゃない」


「じゃあなに?あんたが意識しちゃうとか? いいじゃん、従兄弟。ギリ結婚できるし」


「なんで従兄弟とそうなんのさ、やめてやめて」

< 9 / 77 >

この作品をシェア

pagetop