どんな君でも愛してる
 慌てての人差し指を退けて言うと、クスリと笑われた。

 「漫画ね……。でも、実際このラウンジみたいな世界があるんだよ?スパイがいたって不思議じゃないよ。」

 瑠璃の目の奥を見るように、じっと見つめられるが、見つめ返したことで、キョウの方が瞳をそらした。

「ルリー、見つめすぎ……。」

「えっ……。見つめてた?」
 
 彼の真意が分からずにいたためか、長く見すぎたようだ。

「まっ確かに、スパイがいたって不思議じゃない。……じゃキョウがスパイの可能性もあるんだ。」

 そう呟くと"上手いこと言うね。"と返されたが、瑠璃は先程からキョウに違和感を感じていた。

 ホール内には明らかにVIPと思われるグループと、VIPよりかは庶民的に見えるがそれなりにはお金を持ってそうなグループに別れており、"明らかにVIP"のグループの人間とすごく親しそうにしていたからだ。

 お客と店員というより、友達みたいな。

 そして特に女性は、キョウを誘惑したり結婚を匂わせる発言をしたりと、何人もカウンターにきていた。

 ピアノを弾く間にもそれとなく周りを見れば、キョウと目が合う。

 見つめられてると眼差しじゃなく、監視されるような鋭い目で。

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