どんな君でも愛してる
「俺らじゃなくて、あれは響介にだろ?」

 さらに可笑しそうに話すのは、2メートル弱はありそうな長身に鋭い目付きでジーパンにレザージャケットを羽織る、少し赤みがかかった髪を短くツンツンと立てている、明らかにどこかの筋の人に見える男性。投資顧問会社専務、夏目ジョージ(なつめじょうじ)だ。

「あいつに絡まれる意味が分からない……。」

 ため息をつく響介に3人はただ視線を向けただけで、何も言わない。

「とにかく、スパイと嫁を探さないと行けないんだろ?……嫁か。まだ結婚するつもりもないのに。」

 結婚願望がまるでない響介には、あまり嬉しい条件でもなく、所有権欲しさに結婚までは踏み込めない。

 それをわかっている友人3人は、"検討を祈る!"と、慰めもなくこの状況を楽しんでいるように笑いながら去って行く。

 女に然程興味もなく、女に対して抱きたいとか愛したいとか言う感情も湧いて来ず、だからと言って男性が好きな訳じゃない。

 スパイを見つけられたとしても、結婚相手が見つかるだろうかと考えてから数ヵ月。

 未だに結婚相手どころかスパイすら見つけることが出来ずに焦っていたところに、ーbar emperorーにピアニストが来ることがわかった。
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