どんな君でも愛してる
 あれは数ヶ月前になる。

 私、相嶋瑠璃(アイジマ ルリ)に日本から1通の手紙が届いた。
 
 ヨーロッパでの音楽活動を終え、日本に帰国し、衣食住の場所を探すつもりでいた瑠璃にとって、嬉しい内容の手紙で、一つ返事をし、帰国と同時にその話を受ける旨を伝えたのだ。

 父も母も他界し、親戚もわからない自分は、天涯孤独で頼る人もいないが、両親の祖国を愛して止まなかった。

ー日本に来るときはご連絡下さい。ー

 そう書かれていたため、すぐに、手紙の名刺に連絡し、帰国してすぐに、差出人と喫茶店であった。

「あれ?あなた、確か……。」

 喫茶店には見覚えあること初老の男性が、若いいかにも秘書に見える男性を従え、待っていたのだ。

「覚えてくれてましたかな?お嬢さん。」

「えぇ。コンサートでお会いしましたね。お元気でしたか?」

 ヨーロッパで友人のコンサートにゲスト出演したときに、熱心に誉めてくれた初老の男性だったのだ。

「引き受けてくれて、嬉しいよ。また、お嬢さんの演奏が聞ける。」
 
 そういいながら優しく微笑まれた。

「さて、もう1つお嬢さんにお願いしたいのだが。」

 
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