どんな君でも愛してる
 話を聞きながら、響介は瑠璃を再度観察した。

 昨夜身に付けていたドレスも、ジュエリーも高価なものだったが、barから支給されたものだった。

 エレベーターで初めてあった時の格好は、特別高いブティックの商品ではなかった。

 瑠璃が言うとおり、金持ちではなさそう。外国での演奏費は半分は寄付をしていると調べはついていた。

 この女の雇い主は、安東も知らない。

 謎が多い女のため、慎重に行かないとこちらが食われるかもしれない。

ーこの女がスパイか調べないと。絶対口を割らせてやる。ー

 急に黙り込んだ響介を不思議そうに眺める瑠璃は、その下を向いて考え込む姿を見たとき、一瞬、barのキョウとダブってみえたが、黙って見つめた。

 ふと下を向いてた響介が顔をあげ、二人の視線か交差した。

 瑠璃は、目が話せなくなり、ただ見つめると響介の顔がスローモーションのように近づいてきて、気がついた時は唇が響介の唇で塞がれていた。

 食卓を挟み、軽くチュッと挨拶程度のキスだったが、それでも初めての経験だった瑠璃は、思いっきり響介の頬っぺたを叩くと、慌てて部屋を飛び出した。

「イテッ。」

 響介の呟きだけがシーンとなった部屋にこだました。
 
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