どんな君でも愛してる
 奏子はひそひそと声を小さくしながら話を始めた。

「あの四人は、ここ"B.C. square TOKYO"の王子さまってよく取り上げられてるんだけど……。年収なんて、平社員が平均4000万よ?あの四人は、社長や専務、それ以上の年収。アッパーフロアに勤める彼らは、IT関連会社や法律事務所、投資顧問会社とか名の知れた企業ばかり。特に東雲響介は、世界三大コンサルのうちの一つの社長。それが最近になって四人とも花嫁候補を探してるって噂がどこから流れてね。四人の目に留まるためには、水曜日のこのbarが一番と考えるわけよ、みんな。だから、目に留まるのに必死。」

 カウンターから店内を見渡し呆れ顔で呟く彼女。

「奏子さんは混ざらないんですね?」

 そう聞かれた奏子は、一瞬真顔になると、笑い出した。

「あなた、本当に何も知らないのね?私、結婚してるし、安東に用事があるから来てるのよ!」

 奏子は安東に強いお酒を頼み、身を乗り出すように瑠璃に近づいてきた。

「ルリー。東雲響介の部屋に泊まったでしょ?花嫁候補者の一人にあなたも含まれてるのよ。」

 ギョッとする瑠璃に対して、爽やかな笑顔を見せ、奏子は"じゃまた、水曜日ね。"と手をふり、barを後にした。

 瑠璃は、一人頭を抱えた。

 ここに来てまだ二日と立たないのに、すでに報告すべきことがたくさんありすぎる。

 bar内の様子を見ながら頭の中で、ひっそりと報告内容をまとめている姿を、安東にじっと見られていることに瑠璃は気が付かなかった。
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