どんな君でも愛してる
 手を中々離さない響介に、嬉しい気持ちを隠せないめぐみは、"あの……。"と自分から話しかけたが、返事はなく響介は、エレベーターの外ばかり見ていた。

 その瞳に、めぐみの姿なんてなかった。

 考えるのは浩一の挑発にのってしまった愚かな自分に対しての叱責と、あの場所に瑠璃がいなくて良かった安心。

 瑠璃が聞いていたとも知らず、逢いたいと恋い焦がれていた。

「あの!!」

「………あっ。」

 たまらず少し大きな声を出しためぐみ。

 めぐみの手を掴んでいたことを思いだし、すぐさま手を話すと、逆にめぐみが抱きついてきた。

「私の手を引いてくれて、嬉しかった。」

 上目使いで見上げてくるめぐみ。

 だが、ちっともそそられない。逆に、あざとく感じて思わず舌打ちをしてしまい、それに驚いてめぐみは離れた。

「勘違いしないでくれ。」

「でもっ!!あの流れだったら誰だって……。」

「たまたま近くにいたからだ。」

「ひどいっ!!」

「この会社の人間は君を花嫁として認めるかもな……。だが、東雲の人間が認めるとは限らない。」

 そこで1階にエレベーターがついた。めぐみは高揚していた気持ちが一気にしぼんだ。

 響介はさっさとエレベーターをおり、中に残されためぐみはふつふつと怒りがわいてきた。
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